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東京高等裁判所 平成7年(行コ)41号 判決

東京都武蔵野市御殿山一丁目一四番八号

控訴人

蓮田秀明

右訴訟代理人弁護士

松山正

安藤寿朗

東京都港区高輪三丁目一三番二二号

被控訴人

品川税務署長 池田明治

右指定代理人

髙木和哉

信太勲

木村忠夫

上田幸穂

山本善春

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一申立

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人が控訴人の平成元年分の所得税につき平成三年一月三一日付けでした更正及び重加算税賦課決定(ただし、平成五年二月二六日付けの国税不服審判所長の裁決により過少申告加算税相当額を超える部分を取り消した後のもの)を取り消す。

3  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文第一項と同旨

第二事案の概要

次のとおり付加するほかは、原判決事実及び理由の「第二 事案の概要」欄記載のとおりであるから、これを引用する。

一  被控訴人

控訴人の主張からは本件不動産の譲渡に係る所得が短期譲渡所得か長期譲渡所得であるか明らかではないが、仮に控訴人に最大限有利に、右譲渡に係る所得がすべて長期譲渡所得であるとした上、控訴人の主張どおり、控訴人の本件不動産の譲渡に係る収入金額を帝人殖産から受領した九億八三〇〇万円、控訴人が帝人殖産に支払った登記費用四九〇万七〇〇〇円を本件不動産の経費であると仮定しても、それによって計算される控訴人の係争年分の所得金額及び納付すべき税額は、以下のとおり、本件更正処分における納付すべき税額を下回るものではないから、控訴人の右主張を全面的に採用しても、本件更正処分が取り消される余地はない。

1  総所得金額(雑所得金額) 一億三三二五万七〇二五円

右金額は、原審において被控訴人が主張した金額と同額である。

2  分離課税の長期譲渡所得の金額

(一) 収入金額 九億八三〇〇万円

右金額は、控訴人が主張する金額である。

(二) 所得税法六四条二項を適用し得る金額 一億三三六〇万円

右金額は、被控訴人が原審において主張した金額と同額である。

(三) 取得費の金額 四九一五万円

右金額は、被控訴人が原審において主張した取得費と同様、概算取得費控除を適用して、前記(一)の収入金額九億八三〇〇万円の一〇〇分の五に相当する金額である。

(四) 譲渡費用の金額 四九〇万七〇〇〇円

右金額は、前記仮定において譲渡費用とした登記費用である。

(五) 特別控除の金額 一〇〇万円

右金額は、被控訴人が原審において主張した金額と同額である。

(六) 差引所得金額 七億九四三四万三〇〇〇円

右金額は、前記(一)の金額から(二)ないし(五)の金額を控除した金額である。

3  納付すべき税額 二億五九一三万九二〇〇円

右金額は、後記(一)及び(二)の合計金額(国税通則法一一九条一項により一〇〇円未満を切り捨てた後の金額)である。

(一) 総所得金額に対する税額 六二五五万三五〇〇円

右金額は、前記1の総所得金額一億三三二五万七〇二五円から所得税法八六条一項(平成六年法律一〇九号による改正前のもの、以下「所得税法」という。)に規定する基礎控除の金額三五万円を控除した一億三二九〇万七〇〇〇円(国税通則法一一八条一項により一〇〇〇円未満を切り捨てた後の金額)に対して、所得税法八九条一項に規定する税率を乗じて計算した税額である。

(二) 分離課税の長期譲渡所得金額に対する税額 一億九六五八万五七五〇円

右金額は、前記2の分離課税の長期譲渡所得の金額七億九四三四万三〇〇〇円に対して、租税特別措置法三一条一項(平成三年法律一六号による改正前のもの)により、右金額から四〇〇〇万円を控除した金額に一〇〇分の二五を乗じて算出した金額に八〇〇万円を加えた金額である。

4  本件更正処分の適法性

右仮定における納付すべき税額は、前記3のとおり二億五九一三万九二〇〇円であるところ、本件更正処分における納付すべき税額は、被控訴人が原審において主張したとおり二億四〇六〇万九〇〇〇円であって、その範囲内であるから、本件更正処分は適法である。

二  控訴人

1  被控訴人は、収入金額の計算において、本件不動産の譲渡代金一〇億五三〇〇万円から短期譲渡収入金額八六五〇万円を控除した九億六六五〇万円を収入金額としながら、当審における仮定主張では短期譲渡収入金額を控除していない。したがって、控訴人の主張を前提にするならば、収入金額は九億八三〇〇万円から短期譲渡収入金額八六五〇万円を控除した八億九六五〇万円とすべきである。

2  所得税法六四条二項を適用し得る金額は、一億三三六〇万円だけではなく、小田政志に対する保証債務支払分一億五〇〇〇万円、日本観光に対する保証債務支払分三億二〇〇〇万円も認めるべきである。

3  取得費四九一五万円、譲渡費用四九〇万七〇〇〇円、特別控除一〇〇万円の各金額は認める。

4  以上によれば、本件商品先物取引の当事者が個人か法人か、本件不動産取引の当事者が法人か個人かの問題は別として、収入金額を八億九六五〇万円、所得税法六四条二項を適用し得る金額を一億三三六〇万円と仮定すれば、差引所得金額は七億〇七八四万三〇〇〇円となる。

第三争点に対する判断

次のとおり付加・訂正・削除するほかは、原判決事実及び理由の「第三 争点に対する判断」欄の記載と同一であるから、これを引用する。

一  原判決一四枚目表六行目の「付けで」を「に」と改め、同裏四行目の「付け」を削除し、同一七枚目表六行目の次に行を改めて次のとおり加える。

「控訴人が当審において提出した甲二九号証の一・二、三〇号証、三一号証の一ないし三、三二号証の一ないし八、三三号証・三四号証の各一・二、証人本間邦芳の証言、控訴人本人尋問の結果(当審)によっても、右認定を左右するに足りない。」

二  同二二枚目裏六行目の次に行を改めて次のとおり加える。

「控訴人が当審において提出した甲二〇号証、二二号証、二七号証、二八号証の各一・二、控訴人本人尋問の結果(当審)によっても、右認定を覆すに足りない。」

三  同二三枚目裏一〇行目の次に改めて次のとおり加える。

「控訴人が当審において提出した甲三五号証、控訴人本人尋問の結果(当審)によっても、右認定を覆すに足りない。」

四  同二五枚目表八行目の次に行を改めて次のとおり加える。

「そうすると、控訴人の本件請求は、被控訴人の当審における仮定主張について判断するまでもなく、理由がない。」

第四結論

よって、本件控訴を棄却し、控訴費用の負担について行政事件訴訟法七条、民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 渡邊昭 裁判官 河野信夫 裁判官 小野剛)

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